仮面のシンデレラ《外伝》
眉を寄せる少年の肩を、ばっ!と掴んだ。
「な、なに。」とうっとおしそうにする彼に、僕は続ける。
「今日から、君は“オズ”だ。魔法使いのフリをしている間は、決して正体をバラしてはいけないよ。」
「!」
「君の住む家と生活は僕が面倒を見る。」
?、と僕を見上げる彼は、純粋な彼女への想いでここに来たと思うと、たまらなくなった。
…この日から、“オズ君”が不思議の国の住人となった。
両親を亡くし、遠い親戚の元に預けられたばかりだった彼は、“厄介もの扱いをされていた”と後から聞いた。
居場所を求め、図書館に通うようになった彼に笑顔をくれたのが“アリス”だったのだ。
そんな彼らの関係が、僕とエラに重なって見えたのは偶然なのだろうか。
僕は、彼の親戚と話をつけ、正式な裁判によって親権を得た。
さすがに、何年かかるかわからない計画だ。
時間をいじって元来た時間に少年を返したところで、彼はきっと成長してしまっている。
誘拐事件で世を騒がせるわけにはいかない。
(…まさか、未婚で父親になろうとは…)