仮面のシンデレラ《外伝》
あっさり告げられた言葉は、俺の予想をはるかに超えていた。
「…酔っ払ってるのか?」
「ん?まだこれ一杯目だよ。」
急に頭痛が始まる。
にこにこと表情を崩さない奴に、腹立たしささえ覚えた。
「…あのガキ、まさか人間界出身じゃないだろうな…?」
「よく分かったね!僕らだけの秘密だよ?」
「…しばき倒すぞ、黒ウサギ。お前、俺の職業知ってるよな?俺の首を飛ばす気か…ッ!」
怒りが頂点に達し、ついガタン!と立ち上がって帰ろうとする俺。
すかさず肩を掴んでなだめるウサギは、慌てもせず言葉を続ける。
「あーっ、待って待って!怒らないでよロミオ。君にしか頼めないんだ。」
「…勝手なことを…」
呆れて物を言う気もなくなった俺に、ウサギは苦笑した。
「実は、訳あってあの子を引き取ることにしたんだけど、僕は仕事のせいで外出が多くてね。大学の単位も稼がないといけないし…」
「…“大学”ぅ…?お前、またこっそり人間界に戻ってやがるのか。」
「シオリビトの出張のついでだよ。…オズ君を一人で残しておくわけにはいかないだろ?それに、オズ君に毎日“アリスは?”、と質問ぜめされると、さすがにかわしきれないんでね。」