仮面のシンデレラ《外伝》
ウサギはふと真剣な表情をして呟いた。
「…それに、目をつけられたら厄介な“魔女”がいるんだ。だから彼の側には誰かしら置いておきたくてね。…オズ君が幼いうちは特に。」
(…!)
たまに、この男は底知れない闇を宿した瞳をする。
今にも消えてしまいそうな危うい雰囲気に、どきん、と心臓が鈍く鳴った。
すると、ウサギは、ぱっ!と表情を変え、言葉を続ける。
「その点、ジョーカーの君なら安心だしさ。ついでに護身術でも教えてやってよ。あっ、場所は森の中のログハウスね。鍵はポストの中だから。」
「…誰も引き受けるとは言ってないんだが。」
目を細める俺に、くすくすと笑うウサギ。
「結局、ロミオは優しいからさ。」と言った彼は、少年に声をかけて呼びつけた。
そして、俺の退路を遮断するためか、無垢な瞳の少年に穏やかに告げる。
「オズ君。この人が明日から君の遊び相手になってくれるロミオおじさんだよ。」
「せめてお兄さんと呼ばせろ。お前とさほど歳は変わらんだろ…!」
ウサギに悪態をつくと、少年のくりん、としたエメラルド色の瞳が俺を映した。
「…ロミオ…?」