報復の愛を君に。
パリン。

壁にぶつかったグラスは、粉々に砕けて床に散らばった。

壁から滴る赤ワインと無惨なグラスの破片がその衝撃と強さを物語る。

そりゃそうだ。
力一杯投げつけたんだから。

1時間前、来客があった。

「初めまして…、ではありませんね。
私、木村壱といいます。
先日は瀬奈がお世話になりました」

花岡が“壱にい”と呼ぶ男。
そしてきっと、心にもないことを平気で言える立派な大人だ。
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