報復の愛を君に。
「本当だ。
渉がぼーっとしてるなんて珍しいこともあるんだね。

考え事?
相談なら乗るけど」

「相談ね…」

次に声をかけてきたのは山下という男。

考えてみれば、こいつも相当なお人好しだよな。
俺がグレようが何しようが、こうやって付き合い続けてんだから。

「山下って、過呼吸なったことあるか?」

「過呼吸?
随分急な質問だね。

パニックになって発作おこしたことならあるよ。

昔は人前に立つことがどうしても苦手でさ、それでも無理にステージの上に登壇させられた時には、息ができなくなった。

あれさ、死ぬんじゃないかってくらい苦しいんだ」

死ぬくらい苦しいのか…。

あのとき、誰も錠を開けに来なかったら、あの女はどうなってたんだ…?
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