報復の愛を君に。
「その発作って、どこかに閉じ込められてた起こる奴もいたりすんの?」

「いるだろうね。
暗くて密室なんて、十分に起こりうると思うよ。
なんだか嫌な出来事とも結び付きそうだし」

「いや、そいつにはそんな過去のはなさそうだ。
馬鹿みてーに明るい女だからな」

「渉…、女の子を閉じ込めたんだ…」

あ。
口が滑った。

「これは僕の経験則だけど…。

普段明るく振る舞ってる人ほど、暗くて深い闇を抱えてることってあると思うな。

自分のつらい過去に目を背けたいのは、誰でもなく自分でしょ?
だから明るく振る舞って、過去には何もなかったって言い聞かせるんだ。

そうやって自分を守るしかないんだよ」

ふーん。

山下が言うと重みがあるな。
明るく元気に見えるけど、こいつもなかなか苦労してきてる。

たしかにこいつの言うことには一理あるかもしれない。

だからって、あの女がそうだとは言い切れない。
ムカつくまでに良い人間だ。
考えてみると、偽善者ともまた違う。
気味の悪いお人好し。

それは、怖くて人が寄り付かなくなりそうな程。

あれだけの嫌がらせをされても、平気で笑っていられる神経が不気味だ。
化け物じみてる。

クッソ。
こんなにあいつのことばっか考えてどうすんだよ。

ただイラつくだけなのに。
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