報復の愛を君に。
 「あっそう。
俺の高校時代なんか大したことねーよ。
口うるさい大人が嫌いで、言い寄ってくる女も嫌いで、絡んでくる男も嫌いだった。

だから昼も夜も外で遊んでた。
ただそれだけだ」

「嫌いになるほど、人と関わっていたんですね」

「かもな。

花岡はどうだったんだ?
高校生の時も地味そうだな」

頭に浮かぶのは、黒髪を結び、ノーメイクで眼鏡をかけている女子高生の花岡。
花の女子高生とかいう言葉は全く似合わなそうなイメージ。

「勉強ばかりしてましたよ」

遠くを見つめて、声のトーンが下がった。

あんまり聞かれたくないことだったか?
答えにくそうにした訳じゃないが、なんと言うか…。
これ以上は踏み込むなという雰囲気をひしひしと感じる。

「俺とは正反対だな」

「ですね」

あれ。
さっきのは気のせいだったか?
こっちが気分悪くなりそうな純粋な笑顔にもう戻ってる。

「では、私はそろそろ戻ります。
仕事も残っているので」

「あぁ、そうか」

「失礼します」

…。
なんだったんだろうな、今の時間は。

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