報復の愛を君に。
…。

ここで……

今ここで、あいつの過去を知ったとして、どうなる?
今のあいつのことが本当にわかるのか?

情報は時に、勝手な幻像を作り出す。
白を黒に、黒を白にすることだってある。

見ても意味はないのか?

ったく。
まるでパンドラの箱だ。

「あー…」

時計に目をやると夜中の12時を回ろうとしている。

封筒を受け取ってから軽く1時間は経っているじゃねーかよ。

どうすんだよ、これ。

あー!
埒あかねー!
ここにあるからいけねーんだ。

くしゃりと封筒を掴むと、そのままライターで火をつけた。

じわじわと赤く燃えていく封筒を、ただぼーっと眺める。

最後には、真っ黒な灰だけが残った。
もう紙であったことすらわからない。

これでいい。

あんな女のことで悩むなんか俺じゃねー。
自分が得体の知れないものに侵食されてるような気持ち悪さだ。

それもこれも全部、花岡と関わるようになってから。

こうなったらもう、知りたいことは、こっちから聞いてやろうじゃねーか。
真っ向勝負だ。
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