嘘つきな優しい人
発見
放課後、私は誰もいないだろう図書室に入る
この本の匂いも、夕日でオレンジ色になる
図書室もこの空気感も好きだった。

「朱音」

だけど一番は…

「拓也先生...!」

この人がいるから。

「今日も早かったね?」

数学の松井拓也先生。
毎日午後16時から18時までの2時間。
先生は図書室の先生と交代する。

「だって先生に早く会いたかったから...」
「...かわいい。」

そういう先生は優しく私を抱きしめる。
体を離すと私の頬に右手を滑らせる先生。
...やめて。その手で触らないで...
私は右手の薬指にはめられた指輪の冷たさを感じながら先生と唇を合わせた。


「じゃあ朱音。気をつけて帰れよ。」

そういう先生に笑って手を振る。
私は乱れた髪を手ぐしで軽く整えてはだけた制服もきちんと着直す。
先生には一年以上続いてる彼女がいる。
私が去年、先生を好きになって告白した時にはもう彼女が出来ていた。
それを知ってでも一緒にいたいっていう私のわがままがこの関係。
私がしていることは彼女も傷つけるし先生だって傷つけること。誰も幸せにならない。
ただの浮気だもん。

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