嘘つきな優しい人
だけど、それでも、私はこの関係を選んだ。
体だけの関係、それも先生と。
先生との行為のあとはいつだって自分のしてるのとの酷さに気づいて泣きたくなる。
この関係を肯定するつもりなんてない。
ないけど、否定しかされないことにもつらさを覚える自分がいる。
逃げ出したい、嫌いになりたい。
そう思うのに最後に思うのはやっぱり

「好き...」

その想いだけ。
自然と流れる涙に苦笑いする。
...弱いな。自分で決めたことなのに
ガタッ
「...え?」

私は音がした本棚の方へとゆっくり進むと...
そこにはうずくまった
...金色に近い茶髪の男の子がいた。

「...あの...」
私の声に少しづつ顔を上げる彼は目が合うと
苦笑いした。

「ごめんね」
「...なにが?」
「んー...覗き見?の、つもりはなかったんだけど...」

へらへらと笑う彼。
なんで笑ってるんだろう、
と言うよりもそこ人が誰かにいえば先生は...

「...大丈夫。それより...」
「俺、誰にも言わないから...!」

その言葉に安心して私は彼に笑いかける

「ありがとう。」
「...俺、瀬戸渚。よろしくね」

いや、だけどもしかしたらそう言っておきながら言うかもしれない。

「守山朱音」
「しおん?ってどうかくの?」
「朱色の朱に音。」
「ふーん。
松井先生の指輪の相手朱音ちゃんだったんだね」

指輪の相手...。
それが私だったらどんなに幸せか...

「...」
「...朱音ちゃん?」
「...瀬戸くんはなんでここに?」
「んー、なんとなく?」
「そっか。じゃあ私帰るから」
「待って待って!!一緒に帰ってい?!」
「...うん。」

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