Heart
この土壇場に来ても尚、私の心の奥で抵抗するものがあった。
(…龍太さんに、一言お礼を言いたい)
まともな思考力を失った私に理性などなく
やっとの思いで動いた手は、そのドアを開けてしまった。
ガラ…
開いた隙間は小さかったが、中にいる人に気づいてもらうには十分だった。
「誰だ」
暗闇で、しかもしゃがんでいる私の姿を捉えるのには、しばらく時間がかかったようだ
「…結愛?」
恐れ多くも、聞きたいと思っていた声が耳に届いた。
正直、反応の声をあげることはできない。
「結愛ちゃんっ!!」
龍太さんと和也さんが駆け寄って来てくれた
「結愛、お前なんでここに…」
しゃがんでくれた龍太さんの白衣の袖を掴む
「…はぁ…はぁ…ゲホっゲホゲホ
ひゅー…ひゅー…
…りゅ…たさん、あの…わた、し……」
「いい、喋るな
病室戻るぞ」
私の腕を掴んで一瞥した龍太さんは少し焦ったように私を横抱きにし、私が必死に歩いた数メートルをズカズカと進む。
行きとは真逆で、いとも簡単に私は再びベットへと戻された
「…はぁ…はぁはぁ…はぁ
ひゅー…ゲホゲホっ
…りゅた…さんっ」
「いいから黙って。
早くこれ咥えて吸入…」
「…あり…がと…ざい、した…」
目標達成したと同時に私は意識を暗闇へと手放した。
私の名前を必死に呼ぶ声を聞きながら。