Heart
(……ドキドキなんかしてる場合じゃなかった…
恥ずかし…)
処置を終え、ピンセットをトレーに置く“カシャン”という音だけが病室に静かに響いた
「…悪い。
痛かったか?」
酸素マスクを付け直しながら尋ねられた。
「……だい…じょ……ぶ………です…」
掠れて上手く声が音にならない
すると再び龍太さんの手が私の頭に伸びてきた
恐ろしいほど優しく撫でられる
「……喉は…そのうち良くなる
痛みが引くまで無理に喋るな
身体の方は眠っている間にだいぶ回復出来ているはずた
肺の音もずいぶん良くなっている
しばらく安静にしていればすぐにもとの生活に戻れるだろ」
龍太さんの美しい微笑みがかけられた
(あぁ、失神しそうだ)
「…肺炎を患って一時は呼吸停止していたんだ…
薬が効いてくれてよかった」
(……………呼吸停止……
…………一度私は死んだ……ってこと?)
「…心配するな
もう大丈夫だから」
「……ごめ……なさ…い…」
「……なぜ、謝る」
撫でていた手の動きが止まった
「…いや……、無理に喋らなくていい」
龍太さんの右手が再び私の右手を包みこんだ
「結愛
もう一度聞く
……苦しいか?」