Heart
それから私は徐々にではあったが、現実を受け止め始めた
あの時に殴られたアザの痛みは地味に残るものの、それ以外に身体の不調は見当たらなかった
今は呼吸の苦しさも無ければ咳1つ出ない
これは一重に龍太さんのおかげだろうか
私が目を覚ましたあの時から、龍太さんは基本的に私に付き添ってくれていた
ヘルプに呼ばれて多少離れることは少なくなかったが、その度に私を気にかけてくれた
たぶん龍太さんの行動は、私が部屋に1人になりたくないと思っていることを知ってのことだったと思う
龍太さんは本当に優しい。本当に極道の人なのかと思ってしまう時がある。
まぁ、検査の時は人が変わったように厳しいんけど…
でも検査頑張った後はこれでもかってくらい優しくしてくれるから、ギャップというやつに苛まれひたすらにキュン死してしまう
…そんな数日を過ごした。
違う意味で心臓がもたない日々だった。
目を覚ましてから5日目を迎えた日の朝、いつも通り、龍太さんが病院のドアをノックした
「結愛、開けるぞ?」
「はい」
「おはよう、結愛」
「おはようございます、龍太さん
いつもありがとうございます」
目を合わせて朝の挨拶をする
そして決まって龍太さんは私の頭を撫でて微笑む
それが朝のルーティンになりかけていた
が、その日は違った
「おはよう、結愛ちゃん」