Heart


「身体拭くタオルはここから好きに取って

脱いだ服は洗濯機に直接入れちゃっていいから


ドライヤーは隣の洗面所にある


まぁ、あるものは好きに使っていいから」



「はい、ありがとうございます」



「じゃあ俺、リビングにいるからごゆっくり」



結愛とあまり目を合わせないようにして、逃げるようにリビングに戻り論文の続きに着手する



いや、着手したはずだったのだが全く進まない


頭の中を遮るのは結愛のことばかり



結愛の笑顔が頭をチラつく



必死に論文を読んでも気がつけばいつの間にかボーっとしてしまう



本当に調子が狂う



でもそれは不快なんかじゃない

むしろ、少年が感じる高揚感のようなものに満たされる気になる



胸の高まりで喉の奥がキュッとする感覚で、論文内容なんか1ミリも入ってこない



俺は諦めて手にしていた論文をテーブルに置いて、ソファの背もたれに思いっきり体重を預けた



額に手をあてて、何も考えないように努めるが、胸の高まりを抑えるには至らなかった





──────
────────
────────────



ガチャリと静かなドアの開閉音が聞こえて、俺は閉じていた目を開いて手をどかした



< 176 / 363 >

この作品をシェア

pagetop