Heart
「身体拭くタオルはここから好きに取って
脱いだ服は洗濯機に直接入れちゃっていいから
ドライヤーは隣の洗面所にある
まぁ、あるものは好きに使っていいから」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ俺、リビングにいるからごゆっくり」
結愛とあまり目を合わせないようにして、逃げるようにリビングに戻り論文の続きに着手する
いや、着手したはずだったのだが全く進まない
頭の中を遮るのは結愛のことばかり
結愛の笑顔が頭をチラつく
必死に論文を読んでも気がつけばいつの間にかボーっとしてしまう
本当に調子が狂う
でもそれは不快なんかじゃない
むしろ、少年が感じる高揚感のようなものに満たされる気になる
胸の高まりで喉の奥がキュッとする感覚で、論文内容なんか1ミリも入ってこない
俺は諦めて手にしていた論文をテーブルに置いて、ソファの背もたれに思いっきり体重を預けた
額に手をあてて、何も考えないように努めるが、胸の高まりを抑えるには至らなかった
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ガチャリと静かなドアの開閉音が聞こえて、俺は閉じていた目を開いて手をどかした