Heart
男2「ここで抵抗しないのは賢い選択だよ、結愛ちゃん?」
酸素マスクの代わりに、白い布が口と鼻元に押し当てられる
吸ってはいけない、そんなことは分かってた
でも人間が永久に呼吸を止めることは不可能な訳で。
結局私は息苦しさに耐えられずにそれを吸ってしまった
白い布に含められた甘ったるい匂いを。
想像してた通り、いや彼らにとっては予定通りだっただろう
私はその匂いを嗅いでから視界が歪み、自分の瞳が閉じていくのを感じた。
あぁ、たぶんまた龍太さんに迷惑掛けるんだろうな、なんて考えながら。
私はおこがましくとも、心のどっかで龍太さんに助けてもらえると、それは確定事項だと思っていた
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再び目を覚ました時に私の瞳が映したのはコンクリートむき出しの無機質な天井
グラグラとする頭を抑え何とか身体を起こすと、どうやらそこは一面コンクリートで覆われた広くも狭くもない一室だった
私はその冷たい床の上で無造作に寝転ばされていたようだ
身体が冷えきっているのがわかった