Heart



「.......どうか.........されましたか.....?」



酸素マスクで曇った結愛の声



「いや、何でもない


身体の具合はどうだ。どこか痛いところは?」




「...........いえ


大丈夫です.....」




結愛の“大丈夫”は大抵の場合大丈夫では無い




「片足捻挫してたぞ

変な飛び降り方したな」




意地悪く笑ってそう言えば、結愛は苦笑いを浮かべて、少し恥ずかそうに布団を上にあげ顔を隠そうとした



だから俺は布団を掴んで止めた



「布団かぶんなよ


それから、喘息また酷くなってた。目の前でタバコでも吸われたか?」



「...........はい」



「少し音を聞かせてくれ」



“はい”と頷いて彼女はパジャマの裾を掴んで少し浮かせる



俺は手で温めた聴診器を耳にかけ、結愛の服の中に手を滑らせた



「はい、深呼吸してて」



肺は相変わらず雑音で酷い音だ



心臓は.............




.....今は規則正しく動いてくれているようだ






< 304 / 363 >

この作品をシェア

pagetop