Heart
診察室に着き
龍太がゆっくりと女の子をベットに寝かせる。
なんなんだ、その優しい手つきは。
軽くツッコミを入れながら
もう一度しっかりと肺音を聴く。
ゼイゼイという音がする。
彼女は間違いなく喘息だ。
体温を計ると39.8℃と示された。
「熱、何度だった?」
白衣を取りに行った龍太が帰ってきた。
こいつの白衣姿は
男の俺から見てもかっこよすぎて
綺麗すぎて
直視するのを躊躇う。
たぶん、女が見たら失神する。
「39.8℃だった。
これでも下がった方なんだろ?」
「まぁな
一時は40℃超えてたからな」
「この熱で発作が起きたらまずい。
吸入させよう
龍太、悪いがこの子を1度起こしてくれ」
「あぁ、そうだな
結愛、結愛…」
ベットサイドにしゃがみ、女の子の肩を軽く叩いている。
しかも、申し訳なさそうな顔をして。
幼少期から一緒にいるがこんな顔は初めて見る。
龍太との過去を振り返る間もなく
ベットに横たわる少女の長いまつ毛が揺れる。
「……ん…」
大きな瞳を何度か瞬かせている。