Heart


「…和也さん


龍太さんは…」



「若は今お仕事中


しばらくは俺で我慢してね」



「……我慢だなんてそんな……」




「俺、先生呼んでくるからちょっと待ってて」



部屋に一人取り残される。



これからどうやって生きていこう。



今まで考える余裕なかったけど、いよいよ現実を見て考えなくてはいけない。



今頃お父さんとお母さんはどうしているんだろうか。私は売られた立場だから家にも帰れないんだよね。



高校にだってきっともう行けない。



私の居場所は世界中探したってもうどこにもない



描いていた未来なんて、どこにもない



私にあるのは3000万の借金、ただそれだけ。



私は運良く龍太さん達に拾ってもらった汚い捨て犬にすぎない



この簡易的な居場所にいつまでも居ていいわけじゃない。汚い犬は早く出ていかないといけない。



「………はは…」



静寂の中私の乾いた笑い声が虚しく響き渡る。



こんな状況でも笑える自分が無性に可笑しくて



また笑えてくる。



本当にどうするのが正解なのかが分からない。



誰かに教えて欲しい……。



助けて




欲しい……。




ケホケホ……



私の乾いた咳の音だけが部屋に残った



< 78 / 363 >

この作品をシェア

pagetop