Heart
龍太side
俺は瀬尾組の屋敷の前に来ていた。
和也が用意した服で変装して。
屋敷の前に立っていた組員が前に立ち塞がってくる。
「何かウチに御用か?兄ちゃん」
サングラスをかけたスーツの似合わない若者が睨みを効かせてきたが、俺には無意味なことだ。
「黒崎組の遣いの者だ。瀬尾組の上の方と取引するために御無礼致した。突然ですまない」
仁からオーラを消すように言われたことを思い出すが、消し方なんか知らない。
「…っっっっ黒崎組だとっ…!?」
見張り役の一人が血相を変えて屋敷の中へと駆け込んで行く背中を目で追いやった。
先程まで余裕かましていた目の前にいる若者も冷や汗をかいている。
「…そう怯えるな
黒崎組は瀬尾組をどうにかしようとしているわけじゃない
目的は取引だと言っただろ
邪魔するぞ」
立ち塞がる若者の横を抜けて屋敷の敷居に足を踏み入れた。
「っちょっっ…!!」
俺を止める勇気のない若者を無視しズカズカと玄関に足を進めた。