Heart
「…どう?
落ち着いてきた?今みたいに咳が止まらなくなったらここのボタンを押しながら息を思いっきり吸って、ボタンを離して息を吐いてを数回繰り返してみてね。これはここに置いておくから。
あぁ、俺は久米遥太。龍太の知り合いで君の担当医の一人です」
「……もう大丈夫です。
ありがとうございました。久米さん」
彼女は笑みを顔に貼り付けて言う。
「ちょっと聴診するよ
服ちょっと浮かさせてね」
俺は触れないように服に手をかけた。
「っっイヤっっっっ!!!!!!
っっっあっ……
ごめっ…ごめんなさい…私……ごめんなさい」
「…大丈夫だから謝らないで。
怖かったね、俺の方こそいきなりごめんね。
俺たちは結愛ちゃんが嫌がることはしないし、結愛ちゃんのことを大切にする。
初めて会った人にこんなこと言われても信じられないだろうけど誓って言うよ、俺たちは女の子に手を出さない。出すのは本気な時だけだから」
「ごめんなさい、ほんとに。
あの、もう大丈夫です、私…お願いします…」
自ら着ている服を浮かしたその手は震えている。
可哀想だがやらないわけにはいかない。
「ちょっとごめんね
胸の音聞くね」
ゴソゴソと聴診器を握る腕を服の中に入れる。
彼女の顔色は真っ青になり身体がガタガタと震え出してしまった。
唇を噛み締めて、無意識なのか呼吸を止めてしまっている。
「結愛ちゃん、すぐ終わらせるから頑張って息吸ったり吐いたりしてみて」
彼女なりに一生懸命にやろうとしているのは見受けられる
が、身体が震え普通の呼吸は出来ていない。
相当怖いんだな。
肺の音を聞くのを諦めて聴診器を持つ腕を出した