Heart
それは分かっている。
頭の中では分かっている。
それでも複雑な心情になるのは何故だ。
こうも即決できないのは何故だ。
全ての面において社長に結愛を渡すことは理にかなっていることで
デメリット要素がほとんどないはずなのに
俺の細胞のどこかがそれを納得できていないような、そんな感覚に陥るのはどうしてなんだ。
俺が分からなくなった。
今までこんなこと一度だってなかった。自分の心情を挟んで行動なんてして来なかったから。
この感覚の正体が分かるまで迂闊に判断しないべきだ。
どのみち瀬尾組との関係が落ち着くまでは結愛を匿う必要があるから判断に時間はある。
今、無性に結愛の顔をみたい。
人の顔が見たいなんて、初めてだ。
自分に違和感を感じながら、病院に到着した車から降りる。
先程、和也から結愛の状態の情報が入った。
今は目を覚ましているが発作を起こし発熱したことや遥太から、到着し次第すぐに結愛を聴診するように頼まれている旨が報告された。
病院の裏口から入り一度医局に立ち寄る。
聴診器が入っている白衣を取りに行く必要があったのだ。