お兄ちゃん、すきです。
第1章
絶望
季節は春。と言ってもまだ冬の寒さが残っていて、朝は寒い。
外からはチュンチュンと小鳥のさえずりが聞こえてくる。
そんな朝、私は布団に包まり、目を瞑っていた
別に寝ていたわけではない。寒くて起き上がるのも億劫になっていただけ。
「ゆづちゃん。まだ寝てるの?」
「ん〜…なに?」
「なにって…お母さん達もう出かけるよ?」
「どこに?」
「えぇー昨日話してたじゃない。今日はお父さんの会社の人達でバーベキューやるからって。ゆづちゃんは行かないんでしょ?」
「なにそれ…聞いてない」
「ちゃんと話したわよ。寝ぼけてたんじゃないの。ゆづちゃん行く?」
「ん〜」
今思えばこの時私も行くという選択をしていれば違うルートに入っていたのかもしれない
それはいい方向でも悪い方向でも。最悪の自体は免れていただろう
「いいや。昼から巴(トモエ)と約束してるし。二人で行っておいで」
「あら?巴ちゃんと約束なんかしてたの?ま、いいわ。それじゃ行ってくるね」
嘘。巴となんて約束してない。これはただ行くのが面倒な私が作った言い訳。心配させたくないし。
「うん。行ってらっしゃい〜」
「遅くなると思うけど、夜ご飯までには帰るからね。じゃあね〜」
「あーい」
これが親との最後の会話だった