今夜、お別れします。
「おや、これはお揃いで」
入り口からこちらに向かっているのが見えていた田丸さんの対応は落ち着いたものだった。
「すみません。いきなりで申し訳ないですけど、俺も同席します」
「え?」
「……どうぞ、俺は構いませんよ」
驚く私を他所に、田丸さんはあっさりと了承し、桐谷は私を窓際に座らせてからその隣に自分も座った。
「……お話はなんでしょうか?」
本来であればそのセリフは私が言うべきもののはずで。
唖然とする私の隣で、息を整えつつ、桐谷は真っ直ぐに田丸さんを見ている。
「……この間羽山さんを食事に誘ったんですよ。次の約束をする前に彼女は帰ってしまって、以後連絡も取れなくてね。今日はちょっと強引な手に出ました」
淡々と話す田丸さんの言葉を、私も桐谷も黙って聞いていた。
「田丸さん、彼女を食事に誘うのはどういうつもりでですか?」
「き、桐谷?」
「どういうつもり、とは?」
私を無視して2人は会話を進めて行く。
「勿論、仕事……とは関係なく、彼女に好意を持っているからですよ」
田丸さんの言葉に私は言葉もなくして彼を見つめた。
どういうつもりなんだろう?知らないふりをしているけれど、彼は桐谷と私の関係に気づいているはずで。