シンデレラのドレスに祈りを、願いを。
いつもより口数が少ない。うつむいてテーブルばかりを見ている。大好きなチャイにも手をつけないで。
何か言いにくいこと……ひょっとして別れ話とか。
それならそれで仕方のないこと。自分から別れを切り出せない以上、私はそれを願っていたのだから。
『悠季くん、どうしたの? 好きな子ができた?』
『違います』
『私のこと、ご両親にバレたとか?』
『違います。あの、僕、今夜、友だちの家に泊まることになってるんです』
『え……?』
『高校のクラスメートのうちでパーティーがあって。そこに参加してそのまま泊まることになってて』
頬を赤らめた悠季くんは顔を上げて私を見つめる。
まっすぐな眼差しで。強くて、でも、どこか艶があって。
『だから今夜、一緒にいて?』
『なに言ってるの』
『早百合さん、ダメ?』
少し顎を引いて、顔を傾けて、上目遣いをする。わざとじゃないのはわかってる。自然体だからこそ、かわいくて。伝わる気持ちも大きくて。
もう、抗える余裕はなかった。
『……うちに、来る? 悠季くんをあんなホテルには連れて行きたくないし』
『いいの? ありがとう早百合さん』
さっきまで困っていたのに、花が咲いたようにぱあっと明るい顔になる。