シンデレラのドレスに祈りを、願いを。

心臓が高鳴る。ひとりの部屋で縦にラインの入った小窓を見つめる。
もちろん、悠季くんとの子どもだ。ほかの誰ともそんなことはしていない。

ちゃんと避妊はしたはずなのに。

コンビニでは小箱も買った。ちゃんとつけていたと思う。でもあの日が2回目の悠季くんが正しく装着できなかった可能性もある。万が一はあり得るのだ。

お腹に手を当てる。このなかに新しい命が……。

どうしよう。悠季くんに打ち明けるべき? だって父親だもの。でも待って。もし悠季くんに告げたらなんて言うだろう。そんなものいらない? 産んでほしい? だって彼はまだ未成年……。悠季くんの親御さんにも伝えなくてはいけない。

日本屈指のホテルグループ総裁御曹司が避妊にしくじって妊娠させたなんて。
そんな不名誉な過去をつけさせるわけにはいかない。

悠季くんに……年上の一般人の私。
反対されるに決まっている。たぶらかしたのは私だと責められるのは構わないけど。


大切なひととの間に授かった愛おしい命。
この命を消すことなんて絶対に避けなくちゃいけない。

産みたい。悠季くんの子ども。

私は産むと決めた。父親である悠季くんに内緒で。




★★★
*―*―*
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