シンデレラのドレスに祈りを、願いを。
その日も週末のバイトだった。派遣事務所にある託児所に悠斗を預けて着心地の悪いユニフォームに着替えた。
マイクロバスで会場となるホテルに移動し、同じ衣装を着た子たちと裏口から会場入りした。新会社設立記念パーティー。立食形式で、離れ小島のような円卓がフロアに浮いている。そのうちの2卓が私に割り当てられた。
開かれた扉からお客様がぞろぞろと入場する。今日はスーツ姿の男性が圧倒的に多い。こういうパーティーはアルコールが進むからおかわりを持って行くのも忙しいし、酔いが回ると胸や腰にお客様の手が伸びてくる。お辞儀をしながらため息をついた。
司会が開会を告げ、新社長の挨拶が始まる。乾杯の段になって私はシャンパンを注いだグラスを担当のテーブルで配り始めた。
向こうのテーブルに見覚えのある顔。背の高い若い男性。サラサラのストレートヘアには天使の輪。
……悠季くん?
心臓が高鳴る。お客様の隙間からうかがう。間違いない、悠季くんだ。スリーピースを着て颯爽と立つ彼。凛とした姿勢と瞳はあの頃とちっとも変わらないのに、大人の風を醸し出していた。
こんなところで再会するなんて。
かっこよく成長した悠季くんに比べて私は……。
下をのぞき見る。陳腐で下品な格好。こんなみっともない姿を悠季くんには見せたくない。私はできるだけ彼のいる方向には背を向けて担当テーブルだけを接客していた。