シンデレラのドレスに祈りを、願いを。
『そんなことないよ。毎日定時で上がれるし、そしたら悠斗くんのお世話も家事も分担できるから』
あのマンションを購入するのは悠季くんのご家族だ。それに仕事の内容も腑に落ちない。私は違和感を覚えた。
父親に同行するだけで、仕事になるなんて。
もちろんパーティーでお付き合いするのも大変だろうけど、彼が得るその対価は一般人の私の想像の範疇ではない。定時であがってのほほんと生きて、一般新卒者の倍以上……いや、それ以上のお給料をもらうなんて。
うしろのチャイルドシートで寝ていた悠斗が、ナミだぁ、と言った。振り返ると目をつむったまま笑みを浮かべている。寝言だ。
悠斗は3歳。まだ父親の意義も仕事の意義も理解はできない。でも大きくなったとき、お金を湯水のように使うことを当たり前だと思ってほしくない。
このまま流されて悠季くんと一緒に住むようになったら、それを知らしめる機会はないだろう。毎日、あんな豪華なお子さまランチが出てくるような生活。玩具も旅行もすべてが手に入る環境。
『悠季くん、保留にさせて』
『なにを?』
『悠季くんとの結婚』
★★★
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