シンデレラのドレスに祈りを、願いを。
★ 3
*―*―*
★★★
悠季くんは路肩に車を停めた。ハザードランプが車内に点滅する。
『ちゃんと自分の足で稼げるようになったら迎えに来て』
と告げると開口一番、悠季くんは、なにそれ、と不満を露わにした。彼にしてみれば甘やかされて育った御曹司だと馬鹿にされたと感じたのだろう。でも私にすれば実際にそうだった。
『僕は今、それなりに仕事をしてその対価としていろんなものを得ていると思ってる』
『そう? 家に帰ればごはんができていて、お風呂もわいていて。服もアイロンがけされて部屋はきれいに掃除されていて。そういうの、したことある?』
『ないけど……でも他の学生だって似たようなものだよ?』
『なら、家を出て、ちゃんとやってみせて。親に頼らず、すべてを』
『僕が甘えてるって言いたいんだね。わかったよ、早百合さんの言いたいこと』
そのあと、悠季くんは無言で車を走らせた。
なにがわかったのか……どっちにもとれる意味だ。本当に理解して独力で生きることを決心したのか、それとも私の意味することは無意味だと言いたいのか。どちらにせよ悠季くんは怒っているのだろうし、私はそれを許すつもりもなかった。
しばらくして車は市営住宅の駐車場に到着した。
寝ぼけている悠斗を悠季くんが抱きかかえ、3階にある部屋まで上がってくれた。荷物を持ち、私は彼の後ろを歩いた。
ころりと悠斗の手から白いものが落ちた。海で拾った貝殻だった。