シンデレラのドレスに祈りを、願いを。
私は後悔した。自分の浅はかな行為に辟易した。一度味をしめてしまえば人間、後戻りをするのは難しいのだ。大人ででさえ一度上がった生活レベルを下げることは至難の業。悠斗のような幼子がおいしいものを楽しいものを知ってしまったら、我慢させるのは大変なことなのだ。
『がまんしなさい』
『やだ。おこさまらんち! おもちゃ!』
『悠斗!』
つい、声を荒げた。悠斗は泣き出した。私はごめんねと言って抱きしめる。
違う。本当は八つ当たりなのだ。私だって悠季くんに会いたい、悠季くんと甘い時間を過ごしたい。それが叶わないから声を荒げてしまったのだ。
*―*―*
それからしばらくは悠季くんは現れなかった。
私のことはあきらめたのだと思った。
悠斗もあれから私には何も言ってこなかった。悠季くんのことは忘れたのだと思う。海で拾った貝殻もいつのまにかなくなっていたから。
私は毎日、仕事に励んだ。平日は建築事務所の事務、週末はパーティーコンパニオン。時間に余裕があるときは靴のデコレーションをする内職。ペンチを使って針金で固定するので指に豆ができた。冬になるとそこがあかぎれになり、冷たい風にさらされると切れて血がにじんだ。