シンデレラのドレスに祈りを、願いを。
とりあえず私は話をそらした。


『悠斗はお父さんがほしいの?』
『わかんない。友香はフリンの子なんだって。春休みからお父さんと暮らし始めたけど、なんかやだって言ってた。お母さんがお父さんといちゃいちゃして気持ち悪いって』
『そう』



*―*―*

そんなときだった、悠季くんから連絡が来たのは。

私は有給を使って日中に会う段取りをつけた。あんな話を聞いたあとで悠斗に悠季くんを会わせることに躊躇したから。

悠季くんが指定したのはカフェだった。悠季くんがまだ高校生の頃、よく2人で通ったお店。お店に着くと悠季くんは奥の席に座っていた。声をかけると彼は立ち上がった。

スリーピースではなく、一般的なスーツ。でもそれを立派に着こなして、生意気にも短いひげを顎に生やしていた。

そして内ポケットから名刺を出した。そこにはサトーホテルズの名はなかった。


『父と兄さんたちを説得して全く関係ない会社で働いてる。だって早百合さん、そうでもしないと認めてくれないと思ったから』
『イエロードット電子株式会社、仙台支社?』
『うん。システム関連の会社なんだ。元は家電メーカーなんだけど』

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