シンデレラのドレスに祈りを、願いを。
魔法が解けて、いつものユニフォーム姿にもどったあとも、私には魔法がかけられていた。悠季くんに会える。そう思うと辛い営業も苦にはならなかった。
翌週火曜日、夕方。待ち合わせの場所は市立図書館。制服姿の学生たちがわらわらと集まって自習室に入っていく。受験を控えた高校生たちのようだ。その流れに逆らうように背の高い男の子がしれっと立っていた。目が合うと彼はにっこりと微笑んだ。制服姿の悠季くんだった。
モスグリーンのブレザーにエンジのネクタイ。濃いめのグレンチェックのパンツ、ローファー。襟には桐をモチーフにした金色に輝く校章。
その制服はお金持ちのお坊ちゃまが通うことで有名な私立校のものだった。
悠季くん……高校生……?
あのときはパーティー用スリーピースのせいでもっと大人に見えた。二十歳は過ぎてるって思っていた。
24歳の私が高校生と、恋?
高校生がこんな年上の私と釣り合うはずがない。
戸惑う。そんな私をよそに彼はゆっくりと近づいてきた。