シンデレラのドレスに祈りを、願いを。

私は動揺した。悠季くんも私の手の届かないところにもどっていくのに、さらに悠斗まで。


「だめかな? でも行きたいんだ」


悠斗がまっすぐに私を見た。悠季くんそっくりの強い瞳だ。そうだ、悠斗はもう、私と出会ったころの悠季くんと同じ年齢になっていた。

外見だけじゃない。中身も大人に近づいている。

子どもが成長することを願っていながら、実際こうして見せ付けられて動揺して……。

私が返事をしないので、悠斗は再び頭を下げた。

視界が揺らぐ。悠斗の輪郭がぼける。でも必死に涙をこぼさぬよう、私は目を開いた。

いつかは子は旅立つのだ。覚悟を決めなくちゃいけない。


「もう。頭を上げて。わかったから」
「母さん、いいの?」
「決めたことなんでしょ?」
「うん。それから……母さん、今までありがとう。感謝してる。俺のためにずっと働いてきたことも、ユーキくんと結婚しなかったことも」
「そんなこと当たり前じゃない、親なんだから」
「でも母さん、これからは自分の人生を生きて。俺はもう大丈夫だから。だから……明日ユーキくんに会うときは覚悟きめておいて。結婚式は俺がバージンロードを母さんと歩くから」


自分のせいで悠季くんと入籍できなかったという負い目を感じていたのだろう。もう独り立ちするから自分に遠慮せず悠季くんと結婚してほしい、という意味なのだと解釈した。
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