シンデレラのドレスに祈りを、願いを。


でも、悠季くんはサトーホテルズグループにもどることを決めた。
私が入り込む余地はない。

でもそれを悠斗に伝えたら、きっと、留学を躊躇してしまうだろう。


「うん……ありがとう。悠斗も一人前のことをいうようになったわね。生意気なんだから」
「きっと父さん譲りなんだと思うよ」
「父さん、ね」
「そう、父さん。だって父さんはこの年には母さんを見つけていたんでしょ?」


悠斗はからかうような笑みを浮かべて言った。悠斗が悠季くんを父さんと呼ん
だのは初めてかもしれない。

私は壁に掛けたドレスを見つめる。
明日が最後になるかもしれない。だから素敵な一日になるよう、ドレスに願いを込めた。



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