シンデレラのドレスに祈りを、願いを。

『ごめんね、早百合さん。お茶するぐらいしか時間がなくて』
『ありがとう。自由になるわずかな時間を私のために割いてくれて。それだけでも嬉しい』
『ホントに?』
『本当。悠季くんの顔見れるだけでも私……』


ぽっ、と彼の頬に赤みがさす。さりげなく告白してしまった自分に気づき、途端に恥ずかしくなった。伝染したように自分の頬が火照る。


『……僕も。早百合さんにまた会えてホントに嬉しい』


胸がきゅうと苦しくなる。カウンターの下、悠季くんの手が伸びてくる。私も手を伸ばして指をつないだ。触れた指先が熱くて、痛いほどに心臓は跳ね返り、どうにも押さえきれない気持ちがまぶたに伝わって目が潤む。

恋って、こんなに、切ないものだった?
こんなに震えるものだった?

胸が痛くて、辛くて、私は指を握り返した。悠季くんは指を一度離すと恋人つなぎにした。

時間はあっという間に過ぎて。私たちは手を離し、カフェを出た。

少し遠回りして公園の中を歩く。会うときに夕焼け色だった空は群青色にシフトしていて、そのたもとで街灯がぼんやりと光っていた。
< 7 / 74 >

この作品をシェア

pagetop