シンデレラのドレスに祈りを、願いを。
夏休みにはいると、悠季くんは待ち合わせに私服で現れるようになった。そして学校に拘束されていた時間が浮いた分、会える時間もすこしだけ増えた。
Tシャツにジーンズというラフな悠季くんは大学生に見える。落ち着いた雰囲気を身にまとっているのは幼少期から社交界という大人の世界に顔を出しているからだ。
高校の制服を着ていない、ということは、行ける場所に幅が生まれた。ゲームセンターや漫画喫茶、プールバーにも足を運んだ。
そんな大人の場所に雰囲気が慣れてくると、悠季くんとのキスも深いものになった。どうしてだろう。それは夏の高揚感から来るものなのか、大人たちに紛れて大人になったと勘違いするからか。湿った舌が私の口内をたどたどしく貪り、手は私の耳や首筋を撫でる。どちらかに必死なればどちらかがおろそかになり、そんな幼いのキスと愛撫に私は翻弄されていた。
悠季くん……。
欲しい。でも、ダメ。
なにがあっても最後まではしない。しちゃいけない。必死に自分に言い聞かせて。
*―*―*
夏休み最後のデート。
水族館からの帰り道、何を間違えたのかラブホテル街に迷い込んでしまった。
悠季くんには似つかわしくない派手なネオンと煌びやかな看板。
私は悠季くんの手を握り、Uターンしようとした。でも悠季くんはぎゅっと手を握り返し、頑としてホテルの前から動こうとしなかった。