キス・イン・ザ・ダーク
見合い、という単語に、目を瞠る砂夜。


彼女が驚く表情を見せるのは初めて。


「会社の上司からの紹介でね。断るに断れなくて、会うだけ会ってきた」


心底からの疲れをため息に乗せて、吐き出す。


本当に疲れたんだ。


したくもない見合いをセッティングされ、会いたくもない上司の娘と会って。


笑顔を貼り付けすぎて、表情筋が痙攣しそうだ。


テレビで見たような日本庭園の獅子おどしを聞きながら、なぜか思い浮かべたのは。


砂夜の顔だった。




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