キス・イン・ザ・ダーク
マスターは無言でうなずいて、シェイカーを用意しだした。


ブランデーベースの、赤紫色がきれいな甘口のカクテル。


程なくして、彼女のコースターにカクテルグラスが置かれた。


「……冗談?」


横目でちらりと俺を窺う砂夜。


俺は肩をすくめて、「どちらでも」と返す。


ファム・ファタール。


意味は、運命の女。


冗談でとられても、本気で取られても、どちらでもよかった。




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