キス・イン・ザ・ダーク
冗談でとられるなら、このまま気楽な関係で。


本気でとられるなら……。


砂夜は、しばらくグラスを眺めたあと、唇を付けた。


こくり、と上下する喉が、少しなまめかしい。


唇をちろりと舌で舐めて、砂夜は口を開いた。


「マスター。彼に……キス・イン・ザ・ダークを」


マスターは再び、無言でシェイカーを振る。


洗練された動きでカクテルグラスに注がれた、鮮やかな赤い液体。


彼女の唇の色。




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