キス・イン・ザ・ダーク
「……本気かな?」


今度は、俺が彼女を窺う。


砂夜は微笑んで、「どちらでも」と答えた。


やっぱり、彼女の考えていることは分からない。


俺はそっと、グラスに唇をつけた。


チェリー特有の甘味と酸味、香りのよさとドライ・ベルモットの香草の香りが口に広がる。


見かけによらず高いアルコールに、少しくらりとする。


キス・イン・ザ・ダーク――――暗闇でキスを。


飲み干して俺は、スツールを降りた。





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