キス・イン・ザ・ダーク
「遅かったのね、今日は」


「ああ、ちょっとね」


別に、約束をしてるわけでも、待ち合わせをしてるわけでもない俺たち。


けれどお互いに相手がいれば、隣に座るのが暗黙の了解。


「今日はどうしたの? 三つ揃えなんか着ちゃって」


半分ほど中身の減ったタンブラーグラスの淵を、人差し指でなぞる砂夜。


その様は、まるで映画のワンシーンのようで、現実感がない。


「似合ってない?」


「似合いすぎよ」




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