キス・イン・ザ・ダーク
結露が伝うタンブラーを、口元に運ぶ砂夜。


薄い赤が、真っ赤な唇の中に消えていく。


無理やり視線を引き戻して、銜えた煙草を思い切り吸い込む。


肺の中にニコチンが広がって、軽い酩酊感。


「君のそれも、いつもの?」


視線をやらずに問うと、肯定が帰ってきた。


「そうよ。スプモーニ」


「……好きだな、君も」


初めて彼女におごった酒も、スプモーニだった。





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