キス・イン・ザ・ダーク
彼女が俺を無視して別のスツールに座れば、俺の負け。


格好悪いことこの上ないし、後ろの女性たちにきっかけを与えてしまう。


彼女は足を止め、俺の目を見る。


どういうつもりだ、という顔だ。


俺は無言で訴えた。


頼むから、隣に座ってくれ。


俺の訴えが届いたらしい。


一瞬の逡巡のあと、彼女は俺が引いたスツールに腰を下ろした。


内心のため息を殺して、俺は体を寄せる。





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