ホワイト・バースデイ
生まれたての恋心
「わあー、モテモテじゃん?」
赤やピンクの割合が多い、可愛らしいラッピングの山を見て男は小馬鹿にしたようにそう言った。
出勤して早々、デスクに埋め尽くされたそれを見て、私は痛む頭を押さえてため息をついた。
「何で私、生まれて来たんだろう……」
「哲学的な?俺、専攻心理学だったからわかんねえや」
もはや、イベントの日に生まれてしまった人の宿命だと思う。
三月十四日、世の中はホワイトデー。そして私にとっては、何の変哲もないただの誕生日。
学生の頃から、社会人になった今でもホワイトデーに誕生日プレゼントと称して大量のお菓子を貰っていた。ちなみに、私はバレンタインには誰にも何もあげていない。
「浅沼ってさ、可愛い系の顔なのに女子に人気だよな」
こうなることを想定して持ってきていた紙袋にお菓子の袋を乱雑に突っ込んでいく私を見ながら、男はしみじみとそう呟いた。