ホワイト・バースデイ
「そうだ、浅沼。俺も誕プレ持ってきたよ」
「え、何なに?しょっぱいものがいいな」
「食べ物じゃありませーん」
甘ったるい匂いを放つ紙袋を一瞥して、結城はおどけたように両手をあげてみせた。
私は眉根を寄せて、警戒心を剥き出しに彼を睨みつける。
「まさか……プレゼントは俺♡とか言わないでしょうね?」
「言わない言わない」
学生時代からいつもふざけた態度のこの男。
それじゃなければ何かドッキリでも仕掛けられているのかと考えていると、不意に手を取られた。
「こっち来て」
握られた手がやけに熱く感じて戸惑っていると、結城は悪戯っぽく笑って私の手を引いて歩き出した。
「え、どこ行くの?」
「誰もいないとこー」
さらりとそう言うから、私の頭の中は疑問と不安でいっぱいになる。宣言通り、普段は使われていない資料室に連れて来られた。
結城は軽薄な男だけど、変なことはしない……はず。それなら、何だろう。