ホワイト・バースデイ
「さて、今の俺の気持ちを十文字以内で当ててください」
資料室に鍵を掛けて、私の方に振り向いた男はにっこりと笑った。
突然そんなことを言われても、そもそも何年一緒にいようとこの人が何を考えているのか、私には読めない。
「は?何、いきなり。意味わかんな……」
「はい、文字数オーバー」
今のは違うでしょ、と言いかけた唇に、ひんやりと冷たくて固いものが触れた。
「誕生日おめでとう。千里」
初めて呼ばれた名前に戸惑うのと同時に、私に向けられた柔らかな微笑みに何故だか頬が熱くなった。
いつもは子供みたいに笑って意地悪なことばかり言ってくるのに、こんな風に笑いかけられたことがない。だから、少し動揺しただけ。
「俺ね、今めっちゃ緊張してる」
「緊張……?」
唇に押し当てられていた長方形の箱をようやく受け取って、私は首を傾げた。