ホワイト・バースデイ
「え、結城、あんたまさか」
「うん」
色恋沙汰に疎い私でも、ここまで来たら彼が何を言いたいのか察してしまった。
頬を染めてあまりに熱っぽい視線を送ってくるものだから、私はたまらずうつむいてしまった。
「貸して、つけてあげる」
私の手の中にある箱からネックレスだけを取って、手際よくチェーンを外してみせた。それから、私の首の後ろに手を回す。
「でも、仕事……」
「別にオフィス内はアクセ禁止じゃないでしょ」
こんな距離まで近付いたことがない。結城の纏う柔軟剤のような香りが鼻をくすぐって、頭がくらくらする。
ネックレスをつけ終えたらしく、結城の手がするりと私から離れていった。反射的に顔を上げると、結城はふわりと花がほころぶように笑った。
「好き。ずっと前から」
「わ、私は……わかんない」
結城は出会った頃からずっと友達で、それ以上ではない。数えられる程度しかない遊んだ記憶だって、いつだって他の誰かも一緒にいたから特別意識したこともない。
こうして少し動けば身体が触れ合いそうな距離にいても嫌じゃないけど、だからといって男として好きかと聞かれるとわからない。