バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
女は俺の右腕の傷に視線を落としながら呟いた
うなじが見えてそのまま洋服を剥ぎ取り牙を突き立てたい衝動にかられる

しかし、俺はその衝動を抑えながら、でも彼女の背中のボタンにそっと左手をかけとても優しく外す

「あぁ、君が治療に協力してくれないか?」

女は目線をそのままに、虚ろにどうでもよさそうに

「えぇ、もちろん」

それを聞くや否や、左手で彼女の口をふさぎそのまま首を少し倒し露になった首筋に深く牙を突き立てる

俺の目はその瞬間まで最高に歓喜と欲望で輝いていたと思う、こんなにからだが求める魅力的な匂いならば間違いなく過去最高の血にありつけると…

しかし、口に広がる味に衝撃が走る、ひとすいするごとに今すぐ口を離してしまいたい、上手く飲み込めないほどの味

こんな不味い血は味わったことはないし、初めから分かっていればこんな状況でも絶対に手出ししなかったし、今後も二度としたくない

だけど、何故か俺の意に反して吸血行為は続いている

臭いけど病み付きになるとかではなく、本当に身体が女の首筋に吸いつくことをやめないだけなのだ

もはやオートマチックで吸血している状態で、逆に混乱している頭が落ち着き様々な考えがめぐるー
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