バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
先日ハンターを吸血した時も今までに味わったことのないものだった

あいつは自分の死を悟ったとき、香ばしく深みのある非常に悔いが強い味がした、この世への惜別の念、これ事態はそんなに珍しくない味だ

問題はそのあとだ、その後悔の味の中から歓喜にも似た爽やかだけど苦味のある後ろめたい暗い喜びの味が少しだけした

人間の感情はその性質ゆえか非常に複雑で俺たちはそれを血を介して感じることはあっても俺たち自身からそういった複雑な感情が沸き上がることはない

ゆえに人と違ってなにかに左右されることも執着することも、餌である人間に同情することもない
吸血した人間の記憶は映画を見るようなもので決して自分のものではないし、あくまで自己から複雑な感情が芽生えることはないが、しかしたまに人間の感情に感化されるヴァンパイアもいる

まぁ、俺には全く関係のないことだが

俺はヴァンパイアでヴァンパイアらしい感性で充分だ、人間のように複雑な感情は未熟さゆえに起こるのだろう

ただ、俺たちは味と感情を感じれても思考までは分からないー

この女もハンターも人間は何を想ってあのような味(感情)になったのか…

突然女の味が変わったかと思うと突き飛ばされる、不意討ちとはいえ彼女に拒否されたことに身体が一瞬怯んだ

彼女の瞳はさっきまでとは違い、キラキラと美しく力強い光を宿していた

あっけにとられて彼女の背中を見送ったあと、キズの回復に気付く

「良薬口に苦しってやつか…!?」

(とりあえず助かった、からだの回復のために近場で何人も人を襲いすぎた、しばらくはここから離れよう…)
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