バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー

彼は囁く

「いとしい」

そう言ってトリートメントしたてのツヤツヤの髪に手櫛をする

「綺麗だ」

何度しても一度も引っ掛かることなく髪が彼の指の間を流れていく

「ぜんぶ…」

髪の感触は気に入ったみたいだ

「髪の毛一本もいとしい」

だけど、匂いが気に入らないようでいつものようにお風呂に連行されてしまう

「相変わらずだな」

「何のこと?」

「本当に鈍いな、いつもこうやって他のニオイをつけてくる、それだけ惹き付けてる」

「美容室とはそもそも使ってるものが違うし今日はトリートメントもしたし、いつもと違うにおいになっちゃうのはしょうがないよ?」

ふーっと呆れた顔でこちらを見る

「そうじゃない、けど、そのままでいい、鈍いのも可愛いからな」

どう反応していいのかわからない、けなされているのか何なのか、でもさっきから語尾が恥ずかしい

「あのっ、さっきから恥ずかしいです」

「鈍いからな、ちゃんと言葉にしないといけない、いとおしい」

「もういいです、ちょっと休憩させてください~!」

声を出して笑い出す彼、からかわれていたようだ

「こんな風にからかうなんてひどい…」

目に涙がたまると彼が慌てだす

「ぜんぶ本当だ、嘘じゃない」

私の顔を子犬みたいに覗いてくる

「ごめん、可愛くてからかい過ぎた」

また顔が赤くなってしまうので本当に身が持たない



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