バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
子供達が寝静まった後に、そっとベッドサイドの引出しから白くて鋭く美しい、彼そのもののような牙を取り出す
これがいつも私の身体に突き立てられ、その鋭さから簡単に私の中に進入してくる
(大丈夫、あの人がいなくなってから私は一人で立ててた)
最近は彼がずっといるから忘れていて、
最初の二年くらいは彼とは出会っていてもこんな仲でないどころか二年の間に一度しか接触もなかったし、ちゃんと一人で子供達と過ごせていた
私の横で静かに横になって両手に鼻先をのせ静かに眠るふわふわの毛を撫でる
(大丈夫、今はロキもいる)
自分に言い聞かせる
(前に戻るだけ、私には子供達がいるし彼らを育てるのが私の役目)
それさえあれば生きていける
(もう充分、彼にはたくさんもらった)
ヴァンパイアの彼に唯一私がしてあげられること、それは彼の罪悪感を利用して私に縛り付け血を与え続けることじゃない
無理に人間のルールに従わせるなんて変だし、ヴァンパイアの彼の立場にたてば間違ってる
彼を縛ることは彼の可能性を潰してしまうし
本当はもっとのびのびと生きられるはずの自由を奪ってしまう
そんなの嫌だし、自由に生きてほしい
もう私にできることは彼を解放してあげることだけだ
(私は大丈夫)